02/3/12

BASELITZ SCULPTEUR

BASELITZ SCULPTEUR
30 sep 2011 – 29 janvier 2012
Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris

ゲオルグ•バゼリッツは旧東ドイツ生れ、バゼリッツは彼の出身地の名前で、本名はハンス。彼の「逆さま絵画」はどこかで見かけたことがあるのではないだろうか。画家としてのバゼリッツは、西洋伝統的絵画における慣習的パースペクティブやモチーフの意味、義務づけられた解釈を拒否して新たな形態の捉え方を模索してきた。
絵画において、人物や風景の上下を逆さにするという手法は、既存の対象の知覚方法に対する挑戦であり、この画家の強い意志は彫刻の制作においても貫かれている。

Baselitz, Self-Portrait 1, 1996

こちらは、東京国立近代美術館で2008年1月18日〜3月9日まで開催された「わたしいまめまいしたわーー現代美術にみる自己と他者」展において私が出会ったバゼリッツの作品である。
わたしいまめまいしたわ 東京国立近代美術館

kaimuckentempel, 2010

そしてこちらが、その3年後にロンドンに短期滞在した際にWhite Cube Galleryでの展覧会でお目にかかった、やはり逆さまの作品。エーグルとパイオニアの狭間に。
Between Eagles and Pioneers at White Cube gallery

初めてこれらの作品を目にした際は戸惑った。確かに逆さまなのだが、どうして逆さまなのか、だからなんなのかわからないからである。そして大きなフォルマの逆さま絵画に囲まれてギャラリーをぐるぐるしていると、この大きな逆さまなものに対して本当に私たちが正しく立っていて絵画がひっくり返っているのかどうか、仕舞にはわからなくなってしまいかねない。そこにははっきりとした転覆があるのだ。

今回パリ市立近代美術館で行われた展覧会は、バセリッツの彫刻に注目するという珍しい企画。このように絵画において「逆さま手法」で人々をはっとさせたバセリッツはこれまで40数点の巨大な木彫刻を制作しており、今回はそのほとんどが一挙に集められて展示された。バゼリッツはここでも、現代彫刻のランガージュを覆して我々に突きつけるのだ。

既存のパースペクティブへの挑戦という変わらない戦い。形態の捉え方を常に新しいものへと導いていくパワフルな彫刻。バゼリッツの彫刻はサイズが非常に大きい。太い木をそのまま材料として用い、チェンソーと斧で造形する。このプリミティブな制作方法のおかげで、バゼリッツ本人曰く、絵画で行うよりもダイレクトに新しい形態への追求の道を辿ることができるという。

斧によって形作られたトルソーは、エレガンスを拒絶し、暴力的なまでに荒削りの方法で実現されたものだ。深い切り込みに群青色の絵の具が力強く塗られている。

あるいは、鼻と胸、そして性器が赤く塗られた女性像。このモデルはバゼリッツの自伝のエピソードの中で、ノルウェーの美術館から出たところで転んでしまった際に親切に手当てをしてくれた女性だということが明らかになっている。

Le Penseur de Rodin

「ドレスデンの女たち」は、1989年から90年にかけて制作された13人の女性像だ。1945年、ドレスデンの陥落の際犠牲になった女性達の像。深く荒々しい切り込みと強い色彩によって強い感情を表現しつつも、13の像はひとつの均質的な集合へと還元されている。ここで見られる黄色という色はこれまでのバゼリッツが好んで使っていた赤や青に対してほぼ見られなかった色である。これまでは絵画でしか使用してこなかった黄色は、この作品において初めて彫刻に持ち込まれた。

Le Penseur de Rodin

そして、ロダンの考える人へ呼応する作品がこちら。バゼリッツは1996年から97年にかけて、モンドリアンらのアートに影響を受けてポピュラーアートを意識した彫刻を制作する。2000年以降には幾つかのモニュメンタルな彫刻の制作に取り組んでいる。そして最近の作品の一つに、このロダンの考える人がある。巨大なこの作品は思索している巨人の思考する「声」が聞こえてきそうな強烈な存在感とやはりロダン作品への意味の覆しを含んでいるように思う。