奇形魚のクッキーを食べて、食べ物のことなどを思う。/Deformed fish cookies @Société de Curiosité

奇形魚のクッキーを食べて、食べ物のことなどを思う。

audio « fish cookies short version »


fish cookies short version

1238199_10201898002437890_436098962_n

今週末、9月28日土曜日、夜、パリの北のほうでパフォーマンスをする。
パフォーマンスといっても私はバターを泡立て小麦粉を混ぜて、大きくのばした生地にこまった魚の型をとり、それらをオーブンに入れて魚のクッキーを焼いて、イベントを訪れる人々にクッキーはいかがですかと、たずね回るかあるいは、デフォルメされたお魚の下手くそな絵をクロッキー帳に描いてみるのみである。おどったり歌ったりすることもなければ、素敵な詩をフランス語や日本語で吟じたり、オカリナを吹いたりもしない。そこでおこるのは、ココアやお茶の香りのする、何よりもまずフランスの恵まれた大地でのっしりと育った牛の巨大な乳によるバターの臭いのする、焼き菓子がふるまわれ、それを手にした人々が食べるという、それだけのことである。

それだけのことであるゆえに、ぜひ来てほしいと思う。

poisson2

人生には、忘れたくても忘れられないことが時々起こる。たいていのことは、年齢を重ねるに連れてどうでもよくなって、完全に忘れてしまうか、無関心になる。その瞬間には非常に悲しかったことも、非常に大切だったことも、時が流れるというサラサラとしたその働きによって、悉くどうでもよくなる。それでも時には、時に流されない強烈な感情に出会う。矛盾したことのように思えるが、じつは、強い印象というのは、たったひとつの感情によっては決して引き起こされない。そういったものは、それが怒りであれ、悲しみであれ、実はだんだん遠のいて行ってくれる。消えないのはそれがなんであるか、いつまでもはっきりと分からないような感情なのだ。

2年前の3月に東北の震災があったとき私は既に外国で暮らして一年半くらいが経過していて、それはとても中途半端な時期であった。新しい生活の場で人間関係を築きつつもそれは依然としてしっかりとしたものではなく、フランスという国の生活をすこし理解したような気もするが一方で日本にいつでも帰りたいと思えるような、そんな引き裂かれた気分で鬱々と朝から夜、夜から朝を迎えていた。ある日震災がおこり、その後はどこに行っても誰に会っても、日本の被害の現状と放射能問題について情報と意見を求められた。来る日も来る日も異なる人から同じ質問を受け、ときには私が将来日本に戻る気があるのかどうかといった質問を真剣に投げかけてくる人も会った。私は疲弊して、外に出るのも人に会うのも嫌になった。そんな中、たくさんの人と協力して一回目のチャリティーコンサートをムードンの教会で実現した。司祭さんも承諾してくれ、日本人の多くの音楽家が一生懸命練習した。地元の方にも来てもらうことや一緒にコンサートを行おうと言う主旨で、地元合唱団が協力•参加してくれることになった。私はこの日、抹茶のクッキーを差し入れに焼いて持って行った。彼らは喜んでくれた。一人の年配の女性合唱団員が、クッキーを配る私のトレーが目の前にまわってきたとき、「このクッキーは、放射能汚染されてないの?」とたずねた。私はどのくらいのあいだ、言葉を失っていたか思い出せないが、おそらく数秒の思索ののち、その女性の質問にはウイ、ノンで答えなかったのではないかと思う。私は演奏会開始前にものすごい泣いた。演奏会は、弦楽器、管楽器の演奏者、ホルンアンサンブルのグループ演奏、どの演奏者もすばらしかった。合唱団の連れてきたオルガン伴奏と共演のトランペット奏者の演奏が誰の耳にも分かるほど際立ってめちゃくちゃで、演奏途中に止めようとしたくらいであり、私は演奏会終了後も疲れるまで泣いた。

この年配女性の放射能汚染クッキー疑惑は、耳を疑いたくなるのは私たちが感じやすい日本人であるからで、ちっとも珍しいことではない。(誤解しないでほしいのだが勿論、この女性の無神経さを批判するフランス人もたくさんいる。)先ほど、あまりに日本の状況を尋ねられるので疲弊したと言ったが、それには時々まともに受け止めきれないヘイトスピーチの類いも含まれていた。日本は綺麗な国だったけど、もう汚染されているので旅行できない、日本の製品は買わない、レストランのしょうゆは汚いのではないか、できるならせっかく外国にいるあなたたちは帰らないほうがいいのではないか。

奇形魚のクッキーは、美味しい。これらのクッキーは、フランスのバターと小麦、そして卵、および、フェアトレード製品のみで作られている。基本的にビオの品物からなり、一般的に身体にいいと信用されているものから作られている。食物の安全性と衛生、生産地がどこであるか賞味期限はいつまでか、どのようにどこでだれに加工され、どのようなルートで誰の手を伝わって、どんな風に保存され、洗われ、何と共に調理されて我々の体内に忍び込もうとしているのか。国産の商品は国によってそれを買うように奨励されており、フェアトレードの商品はフェアトレードのマークによってその安全性を保証されて、それを購入し食することは特定の国や人々を経済的に助けることに繋がるという意味を与えられて、購入するように奨められている。

resize_DSC01239

高嶺格さんの作品『ジャパン•シンドローム』の中に、非常に印象的な一節があった。福島産の桃には値がつかないというので、桃農家の人は仕方ないので非常に安い価格で販売されているのだが、あるいは、とれた桃は置いておいても腐ってしまうというので、ただで与えられており、一人の消費者が「お金を出してはぜったいに買わないが、ただなら」といって持って行ってしまうくだりだ。(うろ覚えの部分があって細部が厳密には違うかもしれない)買わないが、ただならもらってやるというのである。結局は、食べるということだ。この消費者は食に困るほど金がないわけではない。ここにきて、食の安全という前提と信じていたものが、いとも簡単に壊されるのを目の当たりにし、戸惑うのはとうぜんである。戸惑うのは、作品をみる我々だけではない、本当の情報というものがどこにあるのかあるいはどこにもないのか、分からないのは被災地の人々も同じだ。

日本を囲む海の周りで、奇形魚が増え始めていると言う情報、それらを我々がどこかで口にしているかもしれないという情報、それらが放射能被害であると言う情報、それらは養殖によるもので過去と比べて変化などしていないという情報、現にセシウム値が異常に高いという情報、そんなもんはデタラメだという情報。なせ我々は、こんなにたくさんのことを知り、たくさんの情報を受け止め、たくさんのことを学んでいるにもかかわらず、なにひとつ本当らしいことを知ることができないのだろう。

魚のクッキーはおいしいと思う。
だから、みんなで食べましょう。
28日の夜、イベント会場@Société de Curiosité, 123, rue de Clignancourt 75018, Paris でお待ちしています。

Je participe à l’événement Human Frames @Société de Curiosité, Paris le 28 septembre 2013. Venez nombreux pour partager le moment délicieux et inquiétant avec les cookies en forme des poissons déformés. Voici ma lettre.

poisson1

Deformed Fish Cookies

We are very sensible and nervous about
our foods’ safeness, hygiene and origin.
It sounds very reasonable for our health.
However,
Food production process is very visible to us ?
Not really.
It’s still in the darkness.
The fair trade is good
for helping developing countries financially.
These products are supposed to be well controlled, safe and delicious.

Radioactive contamination for foods in Japan is serious.
2 years after the Fukushima plants’ explosions,
deformed fishes are found in the sea.
You will reject buying these fishes.
Many fishers lost their jobs.
If they give you fishes,
will you have them ?
otherwise,
in order to help poor fishers,
can you purchase these deformed fishes ?

It’s a question.

What do you react
if someone ask you to buy strange foods
« to HELP PEOPLE IN DIFFICULTIES » ?

I hope your deformed fish cookies please you.

Miki Okubo

poisson3

Cookies de Poissons malformés

Nous sommes tous très sensibles à
la sécurité, l’hygiène et l’origine des produits.
C’est logique pour notre santé.
Cependant,
Les processus de fabrication alimentaire sont-ils vraiment visibles ?
Non, pas vraiment.
Ils sont dans les ténèbres.
Les produits équitables sont bien
pour aider les pays en voie de développement.
Ces produits seront bien contrôlés, en sécurité et bons.

La pollution radioactive de l’alimentation au Japon est grave.
2 ans après les explosions nucléaires de Fukushima,
les poissons malformés se trouveraient à la mer.
Vous refuseriez d’acheter ces poissons.
Les pêcheurs ont perdu leur métier.
S’ils vous donnait ces poissons,
les vous-prendriez?
Sinon,
pour aider ces pauvres pêcheurs,
achèteriez-vous ces poissons malformés ?

Ceci est une question.

Que feriez vous
si quelqu’un vous demandait d’acheter la nourriture non-conforme
« pour AIDER LES PERSONNES EN DIFFICULTÉ » ?

J’espère que les biscuits de poissons vous plairont.

Miki OKUBO

Laisser un commentaire

Votre adresse de messagerie ne sera pas publiée. Les champs obligatoires sont indiqués avec *